2025/09/06 14:50



はじめに:世界を魅了し続けるピアノマン


エルトン・ジョンは、半世紀以上にわたって音楽シーンの第一線に立ち続けてきた稀有な存在である。

シンガーソングライターとして、またピアノ・ロックの象徴的アーティストとして、その名はポップ史に燦然と輝いている。


派手な衣装と大きなメガネで知られつつも、彼の本質は卓越したメロディメーカーであり、時代を超えて愛される普遍性を持ったアーティストだ。

本稿では、彼の基本情報からパーソナルな一面必聴アルバム必聴ソング、そして「ピアノ・ロック」という文脈における役割までを掘り下げていく。





基本情報とキャリアの全貌


エルトン・ジョン(本名:レジナルド・ケネス・ドワイト)は、1947年イングランド生まれ。

1960年代末にデビューし、1970年代には世界的な大スターへと駆け上がった。シングル「Your Song(僕の歌は君の歌)」で一躍脚光を浴び、その後「Rocket Man」「Tiny Dancer」「Goodbye Yellow Brick Road」といった名曲を次々に世に送り出す。


最大の特徴は、作詞家バーニー・トーピンとの黄金コンビである。

エルトンがメロディを紡ぎ、バーニーが詞をつけるこの関係性は、ビートルズのレノン=マッカートニーにも匹敵すると言われるほどの結束と成果を生んだ。

数十年にわたり続くパートナーシップが、膨大なヒット曲の裏側にある。


(バーニー・トーピン:イメージ)




パーソナルな一面と人間像


表舞台のエルトンは常に華やかな存在であった。

煌びやかな衣装、羽根やスパンコールをあしらったコスチューム、そしてトレードマークのメガネ。これは一種の「鎧」であり、内向的な少年時代から生き延びるための表現方法でもあった。


人生の中で彼は幾度も挫折や葛藤を経験した。

薬物依存やアルコールとの闘い、さらには性的アイデンティティを巡る苦悩。


しかしそれを隠さず公に語ることで、多くの人々に勇気を与えてきた。

1990年代以降はHIV/AIDS基金の設立など慈善活動にも力を入れ、単なるロックスター以上の存在として尊敬を集めている。


また、家族観も重要である。長年のパートナーであるデヴィッド・ファーニッシュと結婚し、二人の子どもを育てる姿は、音楽業界の中でも人間的な温かさを伝えるものである。




必聴アルバム5選


エルトン・ジョンの膨大なディスコグラフィの中から、入門にも最適なアルバムを5枚に絞って紹介する。


1. 『Elton John』(1970年)

代表曲「Your Song」を収録した初期の傑作。ピアノを主体とした繊細なメロディが彼の音楽性を決定づけた。



Elton John -Remast- [12 inch Analog]


2. 『Goodbye Yellow Brick Road』(1973年)

全17曲入りの2枚組で、「Candle in the Wind」「Bennie and the Jets」「Saturday Night's Alright for Fighting」など名曲揃い。幅広い音楽性を体感できる代表作。



Goodbye Yellow Brick -Hq- [12 inch Analog]


3. 『Captain Fantastic and the Brown Dirt Cowboy』(1975年)

自伝的要素を持ち、バーニー・トーピンとの友情と音楽的冒険を描いた作品。



CAPTAIN FANTASTIC AND THE BROWN DIRT COWBOY [LP] (2016 REMASTER) [12 inch Analog]


4. 『Too Low for Zero』(1983年)

80年代における復活作。「I'm Still Standing」は彼自身の不屈の精神を象徴するアンセム。



Too Low For Zero [12 inch Analog]


5. 『Songs from the West Coast』(2001年)

熟成したエルトンを堪能できる作品。シンプルで心に響く楽曲が揃い、後期の代表作とされる。



Songs From the West Coast




必聴ソング10選


単曲で聴ける代表的な名曲を10曲紹介する。時代ごとの魅力を知るうえで必須の楽曲である。


1. Your Song(1970) – 初期を代表する純粋なラブソング。




2. Rocket Man(1972) – 宇宙飛行士を題材にしつつ人間の孤独を描く。




3. Tiny Dancer(1971) – アメリカを旅する若者像を描いた名曲。




4. Goodbye Yellow Brick Road(1973) – 幻想から現実へ戻る決意を歌う。






5. Crocodile Rock(1972) – 陽気でノスタルジックなロックナンバー。




6. Bennie and the Jets(1973) – 遊び心ある録音手法で人気を博した。




7. Saturday Night's Alright for Fighting(1973) – 荒々しいロックをピアノで表現した代表曲。




8. Don’t Let the Sun Go Down on Me(1974) – 荘厳なバラード。後年ジョージ・マイケルとのデュエット版も成功した。




9. Candle in the Wind(1973 / 1997) – モンローからダイアナ追悼へと意味を拡張した象徴的楽曲。




10. I’m Still Standing(1983) – 苦難を乗り越え再び立ち上がる姿勢を示した80年代の名曲。




これらの曲は、彼の「成長」と「変化」を理解するための最良の入口である。




ピアノ・ロックの象徴として


エルトン・ジョンを特徴づけるのは、やはりピアノを前面に押し出したロック・スタイルである。

従来のロックはギター中心に構築されることが多かったが、彼のピアノはリズムを刻み、メロディを牽引し、ときにギター以上にロック的な迫力を生み出した。


Saturday Night's Alright for Fighting」や「Crocodile Rock」を聴けば、ピアノがいかに躍動的で観客を熱狂させる楽器となりうるかがわかる。

ビリー・ジョエルベン・フォールズなど後続のピアノ・ロッカーたちがエルトンから強い影響を受けていることは明白である。




エルトン・ジョンの普遍性と華やかさの奥にある真実


エルトン・ジョンの音楽は、ただ時代を映すのではなく、聴く人々の人生に寄り添う。失恋や孤独、希望や再生といった普遍的テーマをキャッチーなメロディと深みのある歌詞で表現し続けてきた。

「Candle in the Wind」が世代を超えて歌い継がれるのは、その象徴である。


エルトン・ジョンは派手な衣装やスター的なイメージで語られがちだが、その根底にあるのは「音楽への誠実さ」と「人間としての正直さ」である。

栄光も挫折も隠さず音楽に刻み込み、それを観客と共有してきたからこそ、彼は半世紀以上愛され続けている。


ピアノに向かう姿は、まさに音楽そのものと向き合う純粋な姿勢の象徴であり、これからもエルトン・ジョンはポップ史を彩るアイコンとして語り継がれていくだろう。





出典元一覧(参考文献・情報源)