2025/05/12 13:15
黒人音楽を世界に広めた伝説のレーベルの歴史とスターたち
「モータウン(Motown)」は単なるレコードレーベルではない。アメリカの音楽史、ひいてはポップカルチャーの流れを根底から変えた伝説的な音楽レーベルである。ソウルミュージックの代名詞であり、スティーヴィー・ワンダーやマイケル・ジャクソンを世界に送り出した存在だ。
モータウンのはじまり
モータウンは1959年、ミシガン州デトロイトでベリー・ゴーディー(Berry Gordy)によって設立された。自動車産業が盛んなデトロイトにちなんで、「モータータウン(Motor Town)」を略して「Motown」と名付けられた。
当時のアメリカでは人種差別が色濃く残っていたが、モータウンは黒人アーティストの音楽を、黒人だけでなく白人層にも届けるというビジョンを掲げてスタートした。
“モータウンサウンド”の魔法
モータウンが築いた音楽スタイルは「モータウンサウンド」と呼ばれ、ソウルやR&B、ゴスペルをベースにしながら、ポップスの要素を巧みに融合させている。リズミカルなビート、印象的なベースライン、豪華なストリングスやホーンセクションが一体となったサウンドは、聴く者の心を瞬時につかむ。
モータウンを代表するアーティストたち
モータウンの成功を支えたのは、数々の才能あるアーティストたちである。以下にその一部を紹介する。
● スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)
12歳でデビューした天才少年。モータウンで育ち、数々のヒットを放ち続けた。代表曲は「Superstition」「Isn't She Lovely」など。ソウルとファンク、ポップの融合により革新的な音楽を生み出した。
● ジャクソン5(The Jackson 5)
マイケル・ジャクソンが兄弟たちと共に活動していたグループ。モータウンからデビューし、圧倒的なパフォーマンスで一躍アイドル的存在となった。
● マーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)
代表作「What's Going On」では、社会的メッセージを音楽に込めて表現した。甘いラブソングから社会派ソウルまで幅広く活躍したアーティストである。
● ダイアナ・ロス&シュープリームス(The Supremes)
黒人女性グループとして初めて全米No.1ヒットを連発。スタイリッシュで上品なパフォーマンスにより、女性アーティストの新たな地位を築いた。
● テンプテーションズ(The Temptations)
卓越したハーモニーとキレのあるダンスで人気を集めた男性グループ。代表曲には「My Girl」「Papa Was a Rollin' Stone」などがある。
モータウンの社会的意義
モータウンが音楽業界にもたらした最大の意義は、人種の壁を音楽で打ち破ったことである。黒人アーティストの作品が白人家庭にも自然に受け入れられ、黒人音楽がマイナー扱いされていた時代を変革した。
また、モータウンは「モータウン・ユニバーシティ」とも呼ばれる育成システムを持ち、歌やダンスだけでなく、話し方や礼儀作法までも教育する徹底ぶりでアーティストを育てていた。
現代にも息づくモータウンの精神
モータウンの精神は今もなお、現代の音楽シーンに脈々と生きている。ブルーノ・マーズ、アンダーソン・パーク、ビヨンセといったアーティストの作品にも、その影響が色濃く表れている。
モータウンは単なる音楽レーベルではなく、時代を動かしたカルチャーの象徴である。音楽で社会を変えるという理想を現実にしたその軌跡は、今なお多くの人々の心を動かし続けている。